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ハイグレ幻術に囚われた日向ヒナタ ②
* * *
「ん、んんっ……」
ヒナタはふわふわとした夢心地の状態で、うっすらと意識を取り戻す。
なんだか、ひどく暑苦しかった。
目蓋を薄く、開けてみる。
が、視界に飛び込んできたのは、瞳を閉じていたときと変わらないまっくらな暗闇だった。
ヒナタはハッと、意識をはっきりさせた。
慌てて顔に手をやってみる。
まだ、顔に仮面が……!? と思ったのだが、指先がとらえたのは肌の柔らかな感触だった。
ヒナタは、むくりと起き上がる。
(仮面は……つけてない。でも、これは……?)
眼はしっかり開けてるはずなのに、視界は変わらず薄暗いままだ。
ヒナタは立ち上がろうとする。
と、足の裏から、チクッとするどい刺激が走った。
(痛っ……!)
びっくりして、ヒナタはお尻を再び地面につけてしまう。
(靴、履いてない……?)
あぐらを掻きながら、ヒナタは自分の足の裏を見た。
うっすらとではあるが、足の裏の皮膚に、いくつもの小石がくっついているのが見えた。
小石を払い、ヒナタは前後に適当に手を伸ばしてみる。
すると、背後にはごつごつとした何かがあった。
岩……? それとも、壁だろうか?
遠くからぴちゃぴちゃと水音のようなものも聞こえる。
それに小石だらけのこの地面……もしかしたら、ここは洞窟なのかもしれない。
そう予測したところで、ヒナタはふと不安に駆られる。
意識を失う寸前、自分は確かに、幻術のような力をかけられようとしていた。
必死に打ち消そうとしたが、結局、力の弱まりを感じることなく、意識がなくなってしまった。
このことから考えてみても……。
(ど、どうしよう……。私、幻術をかけられちゃったのかも……)
ヒナタの全身に緊張が走る。
一体なにが起こるのか……。
もちろん、運よく誰かが居合わせて自分の幻術を解き、ここまで運んできてくれたという可能性もないことはないが……それは、あまりにも希望的すぎる。
(と、とにかく……)
ヒナタは白眼による透視能力を発動させて、辺りを探ってみようとする。
だが、ヒナタが手で印を組むよりも前に――。
ボッ、ボッ、ボッ……!!
「…………!?」
突然、炎がぽつぽつと灯され、周囲を明るくしていく。
どうやら、蝋燭があちこちに設置されていて、それらに火が灯されていったようだ。
「ん、んんっ……」
ヒナタはふわふわとした夢心地の状態で、うっすらと意識を取り戻す。
なんだか、ひどく暑苦しかった。
目蓋を薄く、開けてみる。
が、視界に飛び込んできたのは、瞳を閉じていたときと変わらないまっくらな暗闇だった。
ヒナタはハッと、意識をはっきりさせた。
慌てて顔に手をやってみる。
まだ、顔に仮面が……!? と思ったのだが、指先がとらえたのは肌の柔らかな感触だった。
ヒナタは、むくりと起き上がる。
(仮面は……つけてない。でも、これは……?)
眼はしっかり開けてるはずなのに、視界は変わらず薄暗いままだ。
ヒナタは立ち上がろうとする。
と、足の裏から、チクッとするどい刺激が走った。
(痛っ……!)
びっくりして、ヒナタはお尻を再び地面につけてしまう。
(靴、履いてない……?)
あぐらを掻きながら、ヒナタは自分の足の裏を見た。
うっすらとではあるが、足の裏の皮膚に、いくつもの小石がくっついているのが見えた。
小石を払い、ヒナタは前後に適当に手を伸ばしてみる。
すると、背後にはごつごつとした何かがあった。
岩……? それとも、壁だろうか?
遠くからぴちゃぴちゃと水音のようなものも聞こえる。
それに小石だらけのこの地面……もしかしたら、ここは洞窟なのかもしれない。
そう予測したところで、ヒナタはふと不安に駆られる。
意識を失う寸前、自分は確かに、幻術のような力をかけられようとしていた。
必死に打ち消そうとしたが、結局、力の弱まりを感じることなく、意識がなくなってしまった。
このことから考えてみても……。
(ど、どうしよう……。私、幻術をかけられちゃったのかも……)
ヒナタの全身に緊張が走る。
一体なにが起こるのか……。
もちろん、運よく誰かが居合わせて自分の幻術を解き、ここまで運んできてくれたという可能性もないことはないが……それは、あまりにも希望的すぎる。
(と、とにかく……)
ヒナタは白眼による透視能力を発動させて、辺りを探ってみようとする。
だが、ヒナタが手で印を組むよりも前に――。
ボッ、ボッ、ボッ……!!
「…………!?」
突然、炎がぽつぽつと灯され、周囲を明るくしていく。
どうやら、蝋燭があちこちに設置されていて、それらに火が灯されていったようだ。
しかし……。
(な、なんだか……なにかの儀式みたい……)
ヒナタは気味悪さを感じて、身をすくませた。
と……。
『――お目覚めかしらぁん、お嬢さん』
突然、声が聞こえてきた。
脳裏に直接訴えかけるような、不思議な声。
「だ、誰……!?」
ヒナタは、思わず問いかける。
すると、視線の先に、ふよふよとした煙状のなにかが、妖しく浮かんでは現れた。
目を凝らしてみる。
と、あの、薄気味悪い仮面だったので、ヒナタは慌てて身構える。
『あらあら、そんな警戒しないでちょうだい。お嬢さん――いいえ、木の葉の忍、日向ヒナタ』
名前を呼ばれ、ヒナタはたじろぐ。
「ど、どうして、私の名前を……!?」
その反応に、仮面の不気味な笑いが響いた。
『ンホホホ! 今のアタシは、ね。あなたのことをい~ろいろ知ってるわ。アナタの心に侵入させてもらったの。……ンフフ、随分とすばらしい眼をお持ちのようね? アナタ』
仮面の言葉に、ヒナタは冷や汗を流しながら問いかける。
「……あ、あなたは、何者……ですか?」
とにかく、相手の正体を探らなければと思った。
自分の眼――白眼に興味を持っている感じからして、術を狙った抜け忍なのだろうか。
しかし、今まで出会った忍者とは……なんだかずいぶんと気配が違う気がした。
ヒナタはもう一度問いかける。
「あなたの、目的は……?」
『ンフフ。何者に、目的……ねぇ。そうねぇ、『何者か?』と聞かれれば、アタシはアナタの住む忍者の世界から、遠く遠く離れた異世界の宇宙に存在する者……とでも答えようかしらねぇ』
「……い、異世界?」
『そうよぉ。そこで『ある』魔王を名乗り、とある軍を築いているわ。いろんな世界を支配し、『ある』信仰を広める目的で、ねぇ』
「…………ッ!」
ヒナタの表情が固くなる。
『遠く離れた異世界に存在する魔王だ』と言われても、あまりにも突拍子すぎて、真剣に受け入れることは出来なかった。
しかし、目的が『世界を支配をすること』と宣言されて、良い感情を抱くことはまず無理だった。
この人物は、いずれ自分の里を攻め入る気なんだろうか……?
そんな考察をしていると、『けどねぇ……』という仮面の言葉が耳に届く。
『確かに、世界を支配することを大目的として行動しているけど、今一番の目的は――』
そう言って、仮面の姿がフッと消えてしまった。
ヒナタは「えっ?」と目を見開き、驚いていると……、
『――アナタを 手に入れる ことなの――』
仮面の薄気味悪い笑みが、突然ドアップでヒナタの視界の前に現れた。
「ひっ!!!?」
ヒナタは悲鳴をあげて、しりもちをつく。
顔には、怯えの色が浮かんでいた。
突然姿を消し、顔の間近に現れるという予想外の行動。
なにより……。
「わ、わ、私を、手に入れる……? い、一体、何を言って……」
不吉なその言動に、ヒナタは言いようのない恐怖を感じていた。
仮面は愉快そうに高笑いを響かせる。
『ホホホホホホ! 言葉ど~りよ? 日向ヒナタ……アナタにはワタシの組織に入ってもらおうかしら。ワタシの命令通りにその便利そうな眼を使う、ワタシの忠実なシモベとおなり!』
「あ、あなたの……仲間、に……?」
ヒナタはポカンと口をあけて呟くと、「そ、そんなこと、できませんっ!」と首を横に振った。
動揺する心を必死に落ち着かせながら、
「狙いは、やっぱり私の眼なんですね?」
と、ヒナタは静かに問い返す。
『ンフフ。それもあるけど……』
頷きつつ、『アナタのその身体にも興味あるわね、ワタシ』
と、仮面は告げてくる。
「えっ?」
『アナタ、そーんなエッチでむっちりとした、女として良い身体をお持ちなのに自前の気弱さからそんな暑苦しい服ばかり着て、肌を隠してるでしょう?』
ヒナタはその言葉に密かにドキッとする。
だが、「そ、そんなことありません!」と慌てて反論する。
「忍が薄着になることは危険で、だから……」
『あら、そーかしら? あなたと同い年の女忍者たちは、忍なのにわりと肌を出してるようだけど?』
「……っ!? そ、それは……!」
咄嗟の嘘を即座に見破られ、ヒナタは言葉に詰まる。
その反応が愉快だったのか、仮面は再び高笑いをあげた。
『ホホホ! 隠しても無駄よ、無駄。さっきも言ったけど、今のワタシはアナタのことをよーっく知ってるの。……フフフ、だからぜひ、着せてあげたくなったのよ。ワタシたちの自慢の戦闘服を、ね?」
「……?」
仮面の含みのある言い方に、ヒナタはどうしようもない不安に包まれていく。
落ち着かない心を抑えながら、
「と、とにかく……! 私は、木の葉の里に属する忍……あなたのよくわからない組織に入隊することなんて、絶対にありませんっ!」
ヒナタはきっぱりとそう言ってやった。
当然、向こうがそれで引き下がるとは思ってはいなかったが……。
『そうね、確かにそうでしょうね』
と、以外にも、仮面は納得するように頷いてきた。
しかし……。
『こちらも、今の『人間』のアナタをそのまま引き入れる気はないの』
仮面はそう言葉を続け、『だから、あなたにもなってもらおうかしら……『ハイグレ人間』に』
と、ヒナタに告げる。
「え? は、ハイグレ人間……?」
聞いたことのない単語に、ヒナタは困惑しながら問い返す。
『そうよ、ワタシの部下になった者たちはみんなただの人間じゃないわ。『ハイグレ人間』なのよ。まぁ、見た目は人間の頃と変わらないけれど、そうねぇ、決定的な違いは、……ンフフフフフ』
「……?」
仮面が、くすくすと可笑しそうにまた笑い始めた。
ヒナタは胡乱げに、眉をひそめる。
(な、なに……? 一体なにを、考えているの……?)
じわじわと追いつめられているような気がして、ヒナタは落ち着かなかった。
表情が緊張でこわばっていく。
すると――ペタペタッと誰かが暗闇から近づいてくる足音が聞こえてきた。
ヒナタはビクッと身体を揺らす。
(だ、誰っ……!?)
暗闇の奥を不安げにみつめていると、
『あら、いいタイミング。ようやく、来たみたいねぇ。ンフフフ』
ぼそぼそと仮面は楽しそうにひとり呟いた。
『さて、悪いけどいちいち説明するのも疲れたわ。後は、ここに来る子にたっぷりとかわいがってもらいなさい。ホホホ、楽しみねぇ、あなたのハイグレ姿』
そう言い残し、仮面はヒナタから離れ、足音の方へと向かっていく。
「――お呼びでしょうか、魔王様?」
歩み寄ってきた人物の、第一声が聞こえてきた。
だが、その声が良く知っている声だったので、ヒナタの表情が一瞬やわらぐ。
(この声……!)
蝋燭の光で、その人物の顔もうっすらと見えてくる。
自分とは正反対の強気そうな眼差しに、桃色のショートヘア。
(やっぱり! あれは、サクラさん……!?)
同い年で同期の女忍者である春野サクラが、目の前に現れたのだ。
見知った仲間の登場に、ヒナタは初めて安堵の表情を浮かべた。
だが……。
「え?」
サクラの姿を見て、その顔は少しずつ困惑に染まっていく。
目の前に現れたサクラが、いつものノースリーブに短パン姿ではなかったからだ。
こんな岩や小石だらけの洞窟なのに、靴も履かずに裸足で立っている(もっとも、さきほど仮面を引き剥がそうと暴れたときに脱げてしまったのか、ヒナタの方も今は裸足ではあったが)。
だが、問題なのは、それだけではない。
サクラが身に纏っているものだ。
サクラはこんな場所で、なぜか……水着姿になっていた。
しかも、少し布をずらせば大事な箇所が色々見えてしまいそうな、極めて小さい窮屈そうなハイレグ水着だ。
ヒナタは目を疑いながら、顔を赤くさせる。
(サクラさん……! ど、どうして、あんなきわどい格好を……!?)
初心なヒナタにとって、サクラの格好は、あまりにも刺激的すぎる格好だった。
しかし、当のサクラはたいして気にした様子もなくヒナタ、そして、仮面の方へと近づいてくる。
『――待っていたわよ』
仮面が突然、そんな言葉を発した。
すると、サクラはにこりと微笑み、「お待たせして申し訳ありません」と頭を深々と下げた。
只でさえ困惑していたヒナタは、その親しげなやりとり見てさらに混乱してしまう。
(え? サクラさん……?)
動揺するヒナタに目もくれず、仮面とハイレグ姿のサクラの会話が続く。
『ホホホ。いいえ、ちょうどよいタイミングだったわ。褒めてあげるわ』
「勿体ないお言葉、ありがとうございます」
『ンフッ、では、さっそくあなたに指令を与えようかしら』
「はっ! なんなりと、ご命令ください!!」
サクラが歯切れよくそう返すと、仮面がヒナタの方を向いた。
つられるように、サクラも、ようやくヒナタの方を見る。
ヒナタの姿を一瞥したサクラは、一瞬「え?」と不愉快そうな顔を浮かべ、そして、何かをたくらむような嫌な笑みをヒナタに向けた。
ヒナタはビクッと身体を揺らした。
『ホホホ……指令内容は、理解できたようね?』
「ええ、かしこまりました。ヒナタをハイグレ人間に……魔王様のシモベにすればよいのですね?』
『ンフフフ……頼むわよ?』
「おまかせ下さい! 必ずや、ヒナタを魔王様の忠実なシモベに仕上げて参ります!」
それを聞いた仮面は、不気味な笑いを残しながら、煙のように姿を消していく。
それを見送るサクラは、頭を下げる代わりに――。
「――ハイグレ! ハイグレ! ハイグレッ!」
突然、がに股になり、そんな言葉を発しながら、必死に股間のVラインの前で腕を交差させるみっともないポーズをとり始めた。
(さ、サクラさん……!! なんて恥ずかしいことを……!?)
サクラの突然の奇怪な行動に、ヒナタは頭が爆発してしまいそうなほど顔を真っ赤にさせる。
見てはならないものを見てしまったかのような表情両の頬を手で押さえ、口をあんぐりとさせながら呆然とするヒナタ。
仮面の姿が完全に消えると、それに応じてサクラはようやくポーズを中断した。
そして、ヒナタの方を向き、にやりと獲物を見定めるかのように歩み寄ってくる。
ヒナタはぞくりと背筋を震わせる。
* * *
あとがき
ということで、ヒナタのSSの続きです!
でも、最初の部分を掲載したのが、去年の8月……いやぁ、遅すぎですねぇ、ほんと。
ヒナタを堕とすキャラが別のキャラだったんですか、うまく書けなくて今回サクラに修正しました。
前後編の短編にする予定だったんですが、思いのほか長くなってしまい、これも結構細かく分割することになりそうだったりと、いろいろ迷走してる感じのSSですが、ほぼ書き終えていますのでこっからはちょこちょこと掲載していけると思います。
挿絵もけっこう描けていますので、早くお見せしたいと思いつつ、期待や感想いただけたら泣いて喜びます(泣
では、次回の更新でお会いしましょう!
(な、なんだか……なにかの儀式みたい……)
ヒナタは気味悪さを感じて、身をすくませた。
と……。
『――お目覚めかしらぁん、お嬢さん』
突然、声が聞こえてきた。
脳裏に直接訴えかけるような、不思議な声。
「だ、誰……!?」
ヒナタは、思わず問いかける。
すると、視線の先に、ふよふよとした煙状のなにかが、妖しく浮かんでは現れた。
目を凝らしてみる。
と、あの、薄気味悪い仮面だったので、ヒナタは慌てて身構える。
『あらあら、そんな警戒しないでちょうだい。お嬢さん――いいえ、木の葉の忍、日向ヒナタ』
名前を呼ばれ、ヒナタはたじろぐ。
「ど、どうして、私の名前を……!?」
その反応に、仮面の不気味な笑いが響いた。
『ンホホホ! 今のアタシは、ね。あなたのことをい~ろいろ知ってるわ。アナタの心に侵入させてもらったの。……ンフフ、随分とすばらしい眼をお持ちのようね? アナタ』
仮面の言葉に、ヒナタは冷や汗を流しながら問いかける。
「……あ、あなたは、何者……ですか?」
とにかく、相手の正体を探らなければと思った。
自分の眼――白眼に興味を持っている感じからして、術を狙った抜け忍なのだろうか。
しかし、今まで出会った忍者とは……なんだかずいぶんと気配が違う気がした。
ヒナタはもう一度問いかける。
「あなたの、目的は……?」
『ンフフ。何者に、目的……ねぇ。そうねぇ、『何者か?』と聞かれれば、アタシはアナタの住む忍者の世界から、遠く遠く離れた異世界の宇宙に存在する者……とでも答えようかしらねぇ』
「……い、異世界?」
『そうよぉ。そこで『ある』魔王を名乗り、とある軍を築いているわ。いろんな世界を支配し、『ある』信仰を広める目的で、ねぇ』
「…………ッ!」
ヒナタの表情が固くなる。
『遠く離れた異世界に存在する魔王だ』と言われても、あまりにも突拍子すぎて、真剣に受け入れることは出来なかった。
しかし、目的が『世界を支配をすること』と宣言されて、良い感情を抱くことはまず無理だった。
この人物は、いずれ自分の里を攻め入る気なんだろうか……?
そんな考察をしていると、『けどねぇ……』という仮面の言葉が耳に届く。
『確かに、世界を支配することを大目的として行動しているけど、今一番の目的は――』
そう言って、仮面の姿がフッと消えてしまった。
ヒナタは「えっ?」と目を見開き、驚いていると……、
『――アナタを 手に入れる ことなの――』
仮面の薄気味悪い笑みが、突然ドアップでヒナタの視界の前に現れた。
「ひっ!!!?」
ヒナタは悲鳴をあげて、しりもちをつく。
顔には、怯えの色が浮かんでいた。
突然姿を消し、顔の間近に現れるという予想外の行動。
なにより……。
「わ、わ、私を、手に入れる……? い、一体、何を言って……」
不吉なその言動に、ヒナタは言いようのない恐怖を感じていた。
仮面は愉快そうに高笑いを響かせる。
『ホホホホホホ! 言葉ど~りよ? 日向ヒナタ……アナタにはワタシの組織に入ってもらおうかしら。ワタシの命令通りにその便利そうな眼を使う、ワタシの忠実なシモベとおなり!』
「あ、あなたの……仲間、に……?」
ヒナタはポカンと口をあけて呟くと、「そ、そんなこと、できませんっ!」と首を横に振った。
動揺する心を必死に落ち着かせながら、
「狙いは、やっぱり私の眼なんですね?」
と、ヒナタは静かに問い返す。
『ンフフ。それもあるけど……』
頷きつつ、『アナタのその身体にも興味あるわね、ワタシ』
と、仮面は告げてくる。
「えっ?」
『アナタ、そーんなエッチでむっちりとした、女として良い身体をお持ちなのに自前の気弱さからそんな暑苦しい服ばかり着て、肌を隠してるでしょう?』
ヒナタはその言葉に密かにドキッとする。
だが、「そ、そんなことありません!」と慌てて反論する。
「忍が薄着になることは危険で、だから……」
『あら、そーかしら? あなたと同い年の女忍者たちは、忍なのにわりと肌を出してるようだけど?』
「……っ!? そ、それは……!」
咄嗟の嘘を即座に見破られ、ヒナタは言葉に詰まる。
その反応が愉快だったのか、仮面は再び高笑いをあげた。
『ホホホ! 隠しても無駄よ、無駄。さっきも言ったけど、今のワタシはアナタのことをよーっく知ってるの。……フフフ、だからぜひ、着せてあげたくなったのよ。ワタシたちの自慢の戦闘服を、ね?」
「……?」
仮面の含みのある言い方に、ヒナタはどうしようもない不安に包まれていく。
落ち着かない心を抑えながら、
「と、とにかく……! 私は、木の葉の里に属する忍……あなたのよくわからない組織に入隊することなんて、絶対にありませんっ!」
ヒナタはきっぱりとそう言ってやった。
当然、向こうがそれで引き下がるとは思ってはいなかったが……。
『そうね、確かにそうでしょうね』
と、以外にも、仮面は納得するように頷いてきた。
しかし……。
『こちらも、今の『人間』のアナタをそのまま引き入れる気はないの』
仮面はそう言葉を続け、『だから、あなたにもなってもらおうかしら……『ハイグレ人間』に』
と、ヒナタに告げる。
「え? は、ハイグレ人間……?」
聞いたことのない単語に、ヒナタは困惑しながら問い返す。
『そうよ、ワタシの部下になった者たちはみんなただの人間じゃないわ。『ハイグレ人間』なのよ。まぁ、見た目は人間の頃と変わらないけれど、そうねぇ、決定的な違いは、……ンフフフフフ』
「……?」
仮面が、くすくすと可笑しそうにまた笑い始めた。
ヒナタは胡乱げに、眉をひそめる。
(な、なに……? 一体なにを、考えているの……?)
じわじわと追いつめられているような気がして、ヒナタは落ち着かなかった。
表情が緊張でこわばっていく。
すると――ペタペタッと誰かが暗闇から近づいてくる足音が聞こえてきた。
ヒナタはビクッと身体を揺らす。
(だ、誰っ……!?)
暗闇の奥を不安げにみつめていると、
『あら、いいタイミング。ようやく、来たみたいねぇ。ンフフフ』
ぼそぼそと仮面は楽しそうにひとり呟いた。
『さて、悪いけどいちいち説明するのも疲れたわ。後は、ここに来る子にたっぷりとかわいがってもらいなさい。ホホホ、楽しみねぇ、あなたのハイグレ姿』
そう言い残し、仮面はヒナタから離れ、足音の方へと向かっていく。
「――お呼びでしょうか、魔王様?」
歩み寄ってきた人物の、第一声が聞こえてきた。
だが、その声が良く知っている声だったので、ヒナタの表情が一瞬やわらぐ。
(この声……!)
蝋燭の光で、その人物の顔もうっすらと見えてくる。
自分とは正反対の強気そうな眼差しに、桃色のショートヘア。
(やっぱり! あれは、サクラさん……!?)
同い年で同期の女忍者である春野サクラが、目の前に現れたのだ。
見知った仲間の登場に、ヒナタは初めて安堵の表情を浮かべた。
だが……。
「え?」
サクラの姿を見て、その顔は少しずつ困惑に染まっていく。
目の前に現れたサクラが、いつものノースリーブに短パン姿ではなかったからだ。
こんな岩や小石だらけの洞窟なのに、靴も履かずに裸足で立っている(もっとも、さきほど仮面を引き剥がそうと暴れたときに脱げてしまったのか、ヒナタの方も今は裸足ではあったが)。
だが、問題なのは、それだけではない。
サクラが身に纏っているものだ。
サクラはこんな場所で、なぜか……水着姿になっていた。
しかも、少し布をずらせば大事な箇所が色々見えてしまいそうな、極めて小さい窮屈そうなハイレグ水着だ。
ヒナタは目を疑いながら、顔を赤くさせる。
(サクラさん……! ど、どうして、あんなきわどい格好を……!?)
初心なヒナタにとって、サクラの格好は、あまりにも刺激的すぎる格好だった。
しかし、当のサクラはたいして気にした様子もなくヒナタ、そして、仮面の方へと近づいてくる。
『――待っていたわよ』
仮面が突然、そんな言葉を発した。
すると、サクラはにこりと微笑み、「お待たせして申し訳ありません」と頭を深々と下げた。
只でさえ困惑していたヒナタは、その親しげなやりとり見てさらに混乱してしまう。
(え? サクラさん……?)
動揺するヒナタに目もくれず、仮面とハイレグ姿のサクラの会話が続く。
『ホホホ。いいえ、ちょうどよいタイミングだったわ。褒めてあげるわ』
「勿体ないお言葉、ありがとうございます」
『ンフッ、では、さっそくあなたに指令を与えようかしら』
「はっ! なんなりと、ご命令ください!!」
サクラが歯切れよくそう返すと、仮面がヒナタの方を向いた。
つられるように、サクラも、ようやくヒナタの方を見る。
ヒナタの姿を一瞥したサクラは、一瞬「え?」と不愉快そうな顔を浮かべ、そして、何かをたくらむような嫌な笑みをヒナタに向けた。
ヒナタはビクッと身体を揺らした。
『ホホホ……指令内容は、理解できたようね?』
「ええ、かしこまりました。ヒナタをハイグレ人間に……魔王様のシモベにすればよいのですね?』
『ンフフフ……頼むわよ?』
「おまかせ下さい! 必ずや、ヒナタを魔王様の忠実なシモベに仕上げて参ります!」
それを聞いた仮面は、不気味な笑いを残しながら、煙のように姿を消していく。
それを見送るサクラは、頭を下げる代わりに――。
「――ハイグレ! ハイグレ! ハイグレッ!」
突然、がに股になり、そんな言葉を発しながら、必死に股間のVラインの前で腕を交差させるみっともないポーズをとり始めた。
(さ、サクラさん……!! なんて恥ずかしいことを……!?)
サクラの突然の奇怪な行動に、ヒナタは頭が爆発してしまいそうなほど顔を真っ赤にさせる。
見てはならないものを見てしまったかのような表情両の頬を手で押さえ、口をあんぐりとさせながら呆然とするヒナタ。
仮面の姿が完全に消えると、それに応じてサクラはようやくポーズを中断した。
そして、ヒナタの方を向き、にやりと獲物を見定めるかのように歩み寄ってくる。
ヒナタはぞくりと背筋を震わせる。
* * *
あとがき
ということで、ヒナタのSSの続きです!
でも、最初の部分を掲載したのが、去年の8月……いやぁ、遅すぎですねぇ、ほんと。
ヒナタを堕とすキャラが別のキャラだったんですか、うまく書けなくて今回サクラに修正しました。
前後編の短編にする予定だったんですが、思いのほか長くなってしまい、これも結構細かく分割することになりそうだったりと、いろいろ迷走してる感じのSSですが、ほぼ書き終えていますのでこっからはちょこちょこと掲載していけると思います。
挿絵もけっこう描けていますので、早くお見せしたいと思いつつ、期待や感想いただけたら泣いて喜びます(泣
では、次回の更新でお会いしましょう!
コメント
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待ちに待った続き!
いよいよ本格的に続きが読めるとのことで、この後の続きも楽しみにしています!
いよいよ本格的に続きが読めるとのことで、この後の続きも楽しみにしています!
うおおおお‼︎去年から待ってたぞぉぉぉ
!!!
!!!
Re: タイトルなし
>>
コメントありがとうございます!
毎度、洗脳までの道のりが長々ですいません!
リクの苦しげ表情ももちろんありますので大丈夫ですよ! もうちょっとだけお待ちください!
>>
コメントありがとうございます
①にコメントしてくれた方でしょうか? お待たせして申し訳ありいませんでした。
これからどんどん更新していきます!
≫ただのハイグレ人間さん
ぎゃふんっ、一年もお待たせしてすみませんでしたぁ!
そしてコメントありがとうございます!
コメントありがとうございます!
毎度、洗脳までの道のりが長々ですいません!
リクの苦しげ表情ももちろんありますので大丈夫ですよ! もうちょっとだけお待ちください!
>>
コメントありがとうございます
①にコメントしてくれた方でしょうか? お待たせして申し訳ありいませんでした。
これからどんどん更新していきます!
≫ただのハイグレ人間さん
ぎゃふんっ、一年もお待たせしてすみませんでしたぁ!
そしてコメントありがとうございます!
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